スケッチこぼれ話 Ⅲ
『スケッチこぼれ話Ⅲ』は、第20回『京たけのこ』(2023年4月17日投稿)から第23回『伏見稲荷をスケッチ!』(2023年5月26日投稿)までの製作秘話とその失敗談などを書き留めました。
『 京たけのこを食べる 』(2023年4月17日投稿)
『 京たけのこを食べる 』は、『 さば 』、『 お麩 』と続く食レポの第三弾です。
3月下旬、京都の桜は史上まれに見る速さで満開を迎え、4月の第一週にはあっという間に散ってしまいました。
おかげで、ブログの次回作をゆっくりと考える間もなく、テーマ探しに街中を歩き回る始末。
そこで『京都スケッチ』を救ってくれたのが、京野菜。
旅行者があまり立ち寄ることのないスーパーに、今が旬の、壬生菜(みぶな)や九条ねぎ、賀茂なす、そして京たけのこを見つけたんですね。
ブログでは、長岡京市天神にある「錦水亭」さんの御料理をご紹介しています。
京都では、野菜を一般野菜、新京野菜、伝統野菜の3つに分類しています。
たけのこは、その昔「古事記」にも出てきた伝統野菜の一つです。
ところで、たけのこのお話になると、よく出てくる「朝掘り」の意味は意外と分かっていませんでした。
早朝に掘り出したたけのこだから美味しい!の意味かなと思っていた「朝掘り」には、こんな意味もあったんです。
今晩の夕食に「たけのこ」と思ったら、まず早朝にお店に出かけ朝掘ったたけのこを買ってきます。
急いで自宅に持ち帰ったら、すぐに下処理をします。
お店の御主人によると、そこまでしないと「朝掘り」の本当の美味しさには出会えないということでした。
ところで、錦水亭さんのお料理には、孟宗竹が出てきます。
孟宗竹のように、地表に先っぽが見えて10日も経つと、料理に適さないと言われる旬が大切な、京たけのこ。
そう言えば、漢字の「筍」は、「竹」に「旬」と書きます。旬の意味は、一番美味しい季節を表す「しゅん」と、暦の10日間を区切る「上旬」「下旬」の「じゅん」。
日本人の季節感がたくさん詰まっている「京たけのこ」を、京都に旅行したら、ぜひ、味わってみてください。
『 島原という花街 』(2023年4月29日投稿)
京都の花街に行って見たい、男性なら誰しも憧れる花街のことを知りたいと書き始めたのが、『島原という花街』でした。
ところが、祇園甲部や先斗町(ぽんとちょう)、宮本町の花街で、舞妓さんや芸妓さんのおもてなしを受ける機会にはなかなか恵まれません。
いつか実現した時の心の準備にと(笑)、舞妓さんたちがかつて活躍した「角屋(すみや)さん」を訪ねました。
いざ訪れてみると、そこは神秘的な空間。
黒光りした天井や梁、使い込んだ畳が薄暗い照明に照らされ、幕末に新選組や志士たちが舞妓さんと酒宴を催した空間が蘇ってくるようです。
実は、京都の花街は五花街と呼ばれ、その中に島原は入っていません。
島原は、1641年(寛永18年)に遊郭が六条室町からここに移ってきて花街として栄え、その歴史を五花街に引き継いだんですね。
だから、島原は五花街のお母さんみたいな存在です。
「角屋さん」のすぐそばに「輪違屋(わちがいや)さん」という建物があるのですが、この2つの建物の関係はとてもユニークでした。
「輪違屋さん」は置屋(おきや)と言って、ここで太夫や舞妓さんは置屋のお母さんと寝食を共にし、お稽古から作法など生活のすべてを学びます。
「角屋さん」は、揚屋(あげや)と呼ばれていました。
舞妓さんたちは住んでいなくて、お客さんから座敷の注文が入ると、「輪違屋さん」から駆けつけます。
それから、時代劇に出てくる「太夫(たゆう)」と「花魁(おいらん)」の違いですが、花魁が芸を披露しない娼妓の最高位にあったようです。
一方、太夫は舞や音曲、お茶、お花、和歌などいろいろな芸を身につけていなければいけなかったとのこと。
「角屋さん」の庭には茶室もあって、往年の花街の息遣いを感じることができます。
幕末にタイムスリップしたような不思議な時間と空間を、ぜひ「角屋さん」で味わってみてはいかがでしょうか?
『 京都の新緑2023 』(2023年5月13日投稿)
家族や友人と京都旅行を計画しようと思ったら、どんな季節を選びますか?
真っ赤な紅葉がきれいで食べ物が美味しい秋? それとも京都中が桜のピンク色に染まる春? なかなか、難しい判断ですね。
意外に思われるかもしれませんが、京都で暮らす人に一年で一番好きな季節を聞くと、 ″ 新緑の5月 ″ と答える方が結構多いんです。
『 京都の新緑2023 』は、そんな京都人の思いを覗いて見たいと書き出した企画です。
一般的には、「京都の観光シーズン」から少し外れた5月。市内を散策しても、紅葉や桜見の季節のような人混みはありません。
京都で一番人が集まる嵐山に、早起きして出かけた5月のとある日、いつもの賑わいはどこへやら? 祇王寺や二尊院、常寂光寺もしーんと静まり返っていました。
人混みを掻き分けながら歩く訳でもなく、緑の京都を散策していると、今まで気がつかなかった感覚にとらわれました。
それは、写真の法然院さん。
青もみじが山門の藁葺屋根を覆いつくし、参道の傍らからホトトギスの声が聞こえてきます。
迫ってくる山門に、ふっと秋の黄葉した法然院さんを思い出したんです。
京都でもあまり見かけない黄色に紅葉していた法然院さんのもみじが、新緑の今、若竹色の瑞々しさで出迎えてくれました。
新緑の京都でお寺や神社を訪れたら、境内のもみじや銀杏、桜も一緒にアーカイブにしてください。
もしも、秋、再びそこを訪れることができたら、春の風景と見比べてみてください。
きっと、はっとすることがあると思います。
『 伏見稲荷をスケッチ! 』(2023年5月26日投稿)
過去に何度も伏見稲荷 ″ 登山 ″ に挫折した桜井旬にとって、この企画は、最後まで迷い迷いました。
背中を押され原稿を書くため登山に漕ぎ着けたのは、「トリップアドバイザー調査」です。
外国人が投票する日本の観光地ランキングTOP10に、いつも『伏見稲荷』は登場するんですね。
今年は5月に開催されたG7サミットで広島の平和記念資料館が注目され、『伏見稲荷』は2位だったかと思いますが、その人気が衰えることはありません。
「お稲荷さん信仰」って日本独特のものだと思うのですが、外国人が訪れたいと思う何かがここにはあるのでしょうか。
日本人の桜井旬も彼らに引っ張られ、ついに登山。三ノ峰、二ノ峰そして一ノ峰へと頑張ってきました。
最後の様子はぜひブログを読んで頂けたらと思うのですが、″ 灯台下暗し ″とはこの事、本当にいろいろな発見のお稲荷さんでした。
頂上に向かう途中、写真のような不気味な光景に何度か出くわしました。
子供の頃、お稲荷さんの言い伝えを聞いた時、とても怖い気持ちになった方も多いと思います。
そんなお話もブログに書きました。
頂上近くでは、お稲荷さんが着物姿の美しい女性に化けた写真も掲載しています。
実は、このシーンは桜井旬の日頃の運動不足と不摂生が生んだ ″ 単なる幻覚 ″ だったのですが………。
権太夫大神近くの茶店で「Mt.inari set 950円」をいただきました。
『伏見稲荷」は、紛れもない日本の名スポットです。
でも、ここまで導いてくれた外国の方への感謝と、稲荷うどんの甘酸っぱい味……ずっと記憶に残っていると思います。
次回の『 スケッチこぼれ話 』 は、『 京都水族館 』(2023年6月9日投稿)からお届けします。
桜井旬は、京都水族館の「クラゲワンダー」がとても印象的でした。(それから、「ニモ!ニモ!」と元気いっぱいの「ちびっこギャング」のことも………)