藤右衛門さんと夏の桜
ⅱ 夏の円山公園
祇園祭と五山の送り火が終わった8月下旬、運転手さんに「お客さん、この時期に円山公園ですか⁈」いぶかしそうな顔をされ、タクシーは四条大橋を渡って祇園街を抜けると八坂神社の西楼門へ。
八坂神社の奥に春、桜で有名な円山公園があります。毎年、4月の第一週ぐらいだと思いますが、淡いピンクの花を咲かせる「一重白彼岸枝垂桜」という一本桜。
春満開の花を咲かせる頃、この桜を訪れる人たちで垣根の周りは人だかり。みんな、幸せいっぱいな表情です。別名「祇園しだれ桜」といって、京都人が一番大好きな桜です。
でも夏の桜……… もちろん、桜の花もとっくに散ってしまい、写真のように青々とした葉っぱが生い茂り、ほとんど立ち止まる方もいません。
これがたおやかに枝垂れていたあの可憐な桜? 少し不思議な感じがしました。桜の木は夏の陽ざしを浴びて元気いっぱいに葉を広げていたのです。
ⅲ 藤右衛門さんと夏の桜
京都に桜守として有名な佐野藤右衛門さんという方がおられます。桜の時期になるとテレビにも引っ張りだこで、今は全国の桜のお世話をしておられます。
その藤右衛門さんが書かれた『桜守のはなし』の中にこんな一節があります。
「夏は桜の幹をふとらせるときですわ。このときにだいじなわたしらのしごとは、ちゅういぶかく観察して、虫や病気をたいじすることです。あの暑さのなかで、桜は『さあ、体力をつけるぞ』としています。」
「そやけど、そのころは湿度や気温も高くなって、幹や葉っぱに虫や病気が出やすくなる。虫や病気をみつけても、すぐに注射器などではらってやれば、大きなことにはなりません。でも、気づかんとほっておけば、とりかえしのつかないことになる。「守り」のしごとのだいじな季節ですわ。」(原文のまま ) ☆『桜守のはなし』(佐野藤右衛門著 講談社)
P.S. 藤右衛門さんが注射器から吹きかけた魔法の煙草の煙。桜は、この夏、元気いっぱいでした。
来年、たくさん花を付けた桜を観られますように!
旬のおすすめ!【桜 満開のタイミング】
★気温の影響なのか、ここ数年3月末に満開を迎える桜もあります。京都新聞の桜開花情報が丁寧でわかりやすいと思います。
円山公園の枝垂桜をご覧になられた日は、近くの高台寺、清水寺がお勧めです。少し離れていますが、満開時期が近い醍醐寺の桜も圧巻です。
【円山公園 枝垂桜】
京都市東山区円山町(阪急線「河原町駅」徒歩20分、京阪線「祇園四条駅」徒歩15分)
初代の桜は樹齢220年で昭和22年に枯死し、現在の桜は2代目。
薄紅色の祇園枝垂桜(エドヒガン)
旬のおすすめ! (2023桜 スポット)
➀ 醍醐寺 豊臣秀吉の「醍醐の桜」で有名なところ。ソメイヨシノ、ヤマザクラ、オオシマザクラが咲き乱れています。桜の原生種の一つにエドヒガンがあるのですが、醍醐の方は「江戸桜」と呼んでいたのが印象的でした。
② 花見小路そば新橋通 京都市内にはちょっと小道に入ったところに可愛らしい桜があちこち咲いています。ガイドブックには載っていない自分だけのスポットが幾つも探せます。
③ 京都府庁の桜 枝垂桜が満開になると明治37年に建てられたアンティークな建物とマッチングしてエキゾチックな雰囲気です。
④ 清水寺 京都で観光客が一番多い名所です。桜の時期だったら早朝6時ぐらいに早起きしてゆっくり散策するのもいいと思います。
⑤ 将軍塚 蹴上駅からタクシーか健脚の方は少し山登りを兼ねて。京都市内が一望できます。桜の時期はライトアップもしています。
☆「2023 桜特集」を3月に掲載する予定です。ぜひご覧になられてください。