辰年は飛躍の年!
ⅰ 梅宮大社
2023年師走、あと10日もしたら年が明けるという日、参拝客を待つ梅宮大社にはつかの間の静けさがありました。
平安のはじめに創建されたという本殿の前に飾られた絵馬。
ユニークな龍が舞う姿は親しみがあって、元旦の年賀状が待ち遠しくなりました。
今回の『辰年は飛躍の年!』は、梅宮大社からのスタートです。
ⅱ 松尾大社
師走に、世界中を駆け巡った大谷翔平さんのドジャーズ入団。
彼の活躍を誇らしく思った日本人もきっと多かったことと思います。
そして、今年は辰年。
しかも、甲(きのえ)の辰年は、後に出てくるのですが、60年前にもおめでたい事がたくさんあった年でした。
写真の大きな絵馬は松尾大社です。
京都のお正月を迎えるニュースの中で、松尾大社の絵馬は一番早くに飾られた絵馬として報道されていました。
ⅲ 上賀茂神社と下鴨神社
京都で初詣というと、上賀茂(かみがも)神社に下鴨(しもがも)神社。
上賀茂神社の二の鳥居をくぐると、細殿(ほそどの)という殿舎の前に円すい形に盛られた一対の白い砂山がありました。
二つの砂山は、上賀茂神社の神様が依代(よりしろ)としているところです。
依代とは、「神霊が寄りつくもの」という意味だそうです。
日本では大昔から、神様や精霊、魂はあらゆるものに宿ると言われています。
上賀茂ではこうして二つの砂山をつくって神様を招き寄せるんですね。
そして、砂山の向こうに二枚の龍の絵が掛けられていました。
漆黒の版から今にも飛び出してきそうな金色の龍。
神社は別名、「賀茂別雷(かも・わけ・いかづち)」と呼ばれています。
まさに「いかづち(雷)」と名付けられた神社の守り神がお正月に出てきた感じです。
真っ白な大きな板に墨で書かれた迫力満点の龍。
下鴨神社の楼門の正面に立つ舞殿の龍です。
「龍の九似(きゅうじ)」という言葉を聞かれたことはありますか?
想像の動物・龍は、九種類の動物の化身だと言われています。
その角は「鹿」、頭部は「らくだ」、うなじは「蛇」、目は「鬼」、爪は「鷹」、手のひらは「虎」、耳は「牛」、腹は「みずち」、うろこは「鯉」に似ています。
どこかで龍を見かけたら、九似(きゅうじ)の動物と見比べてみてください。
ⅳ 北野天満宮
ここからは、辰年の干支と龍のお話です。
写真は、初詣の参拝客でごった返した北野天満宮。
「天神さん」の愛称で地元の方に親しまれている天満宮。
初詣、その後にやって来る梅の祭と、一年の中でも一番賑わう季節です。
山門に掛けられた大きな絵馬。
アップして見ると、右下に「令和六年甲辰(きのえたつ)」と書かれていました。
私たちが良く耳にする干支は、子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(い)12種類の動物で構成されています。
でも、正式な干支の呼び方は、十二の動物の名前の前に、十干(じっかん)の漢字が付けられています。
甲(きのえ)、乙(きのと)、丙(ひのえ)、丁(ひのと)、戊(つちのえ)、己(つちのと)、庚(かのえ)、辛(かのと)、壬(みずのえ)、癸(みずのと)の10のことです。
十干(じっかん)の生まれは古く、古代中国の殷(いん)の時代にさかのぼると言われています。
暦のお話はちょっと難しいのですが、十干が生まれた頃には、地球上のすべてのものは、5つの根元的成分「木・火・土・金・水」から生み出されるという五行説があって、さらにこの5つを兄(え)と弟(と)に分けました。
そうすると、十干の一番目の「甲(きのえ)」は「木の兄」、二番目の「乙(きのと)」は「木の弟」のように10個がつながっていきます。
12年で一巡する十二支(じゅうにし)と10年で一巡する十干(じっかん)は、結局、60通りの組み合わせを生むんですね。
ちなみに還暦は、60年で十二支と十干が一巡し、誕生年の干支に還ること、これが還暦の由来らしいです。
2024年に迎える甲辰(きのえたつ)は、十干十二支の41番目の年にあたり、十干の1番目である「甲」と十二支の5番目である「辰」が重なった年なんですね。
ⅴ 天龍寺と妙心寺
京都のお寺を訪れると、高い天井や襖に描かれた龍の絵に出会います。
天龍寺の龍の絵は、法堂(はっとう)という大きなお堂に描かれています。
土・日・祝日しか見ることはできないのですが、お坊さんが修行するための建物だったので、日中でも暗く、天井から龍に睨まれる空気感は少し異様な感じ。
Disneyのホーンテッドマンションの迫力! と言ったら、たとえる順番が逆、と怒られてしまいますね。笑
朱色の大きな梁の奥に見える龍は、妙心寺の雲龍図レプリカです。レプリカと言っても天井までの高さが10m以上もあります。
本物は、何倍かの広さの法堂に掛けられていますが、写真撮影ができないのでご紹介できませんでした。(ぜひ、本物もご覧になってください。)
妙心寺のお寺の方にこんなお話を聞きました。
その昔、仏教はインドから中国を経て日本へと伝わったとか。
インドは雨期と乾期がはっきりしていて乾期が続くと農作物が育たないので水の神様「龍」を拝む信仰がありました。
インドの「ナーガ」というコブラが、龍のモデルだったそうです。
あとで気がついたのですが、禅宗のお寺には龍の襖絵や屏風も多いですね。
写真の天龍寺の屏風。
何十帖もある大きな座敷の前まで来ると、参拝客の方はその威圧感に足を止めてしまいました。
水の神様「龍」を拝む信仰は、五穀豊穣を願う日本人にとっても大切な習慣だったとご住職が言っていました。
辰年はいつにも増して豊かな生活を願う一年になるかもしれません。
ⅵ 護王神社
「甲辰(きのえたつ)」のお話をもう少しだけ。
「甲」という字は、鎧や兜の「甲冑(かっちゅう)」の一文字です。
それは、種子が厚い皮に守られて芽を出さない状態をイメージしていて、物事に対して耐え忍ぶという意味にもなるそうです。
そして、「辰」は、「振るう」という文字に由来しています。
万物が振動し、草木が成長して活力が旺盛になる状態を表している文字なんですね。
「甲辰」は、こんなところから「飛躍の年」と言われています。
「甲辰(きのえたつ)」を紹介した記事に、ちょうど60年前の出来事が書かれていました。
それは、2024年と同じ「甲辰」だった1964年の出来事。
この年、東京オリンピックの開催、東海道新幹線開業や東京モノレールの開業、そして日本武道館が完成したのもこの年でした。
日本で、はじめて開催された東京オリンピック。
戦争で国土が被災し国民が焼け野が原のバラックから復興を遂げた象徴でした。
ⅶ 編集後記(八坂神社)
いろいろな出来事があった2023年を振り返って、反省したり、自信を持ったり、ちょっと工夫したりして、新しい2024年が始まります。。
ところで、冒頭の大谷翔平さん。
彼が今から14年ほど前、高校生の時に書いた「マンダラチャート」をどこかで見かけたことはありますか?
彼は、高校生の時、「ドラフト一位8球団」という大きな目標をたてました。
図の一番真ん中の文字です。
そして、この目標を実現するため、さらに8個のテーマを掲げました。「スピード160km」、「変化球」、「運」、「人間性」、「メンタル」、「体づくり」、「コントロール」、「キレ」。
驚くことに、この8つのテーマを実現するため、さらに、8つのテーマを決めたんです。
例えば、「運」をつかむために、「あいさつ」、「ゴミ拾い」、「部屋そうじ」、「審判さんへの態度」、「本を読む」、「応援される人間になる」、「プラス思考」、「道具を大切に使う」を実行されてきました。
いつも笑顔の大谷翔平さん。
非凡な才能を持った方がこんなに努力を重ねていたことに、とても驚いてしまいます。
最後の龍は、初詣客で賑わう八坂さんです。
それは、笑顔のオオクニヌシノミコトが龍にまたがって龍を操っている姿でした。
桜井旬も、大谷翔平さんを見習って、ちょっとだけ、頑張ってみようかな??………辰年の飛躍の運気に乗って。