『京都スケッチ』の紅葉

紅葉散策 ~清水寺・ねねの道・円山公園~

 頬に冷たい空気を感じ始めた11月15日、初紅葉を探しに音羽山へ出かけました。

 

ⅰ 京都の紅葉

 京都を紹介する観光ガイドブックには、紅葉を紹介する記事が多く掲載されています。そして11月中旬から12月初旬にかけて、紅葉のシーズンには全国から観光客が押し寄せます。

 こんなにたくさんの人を受け入れて京都は大丈夫なの?つい心配になってしまいますが、実は京都の紅葉は街中のお寺や神社、そして史跡のどこに出かけても見ることができます。

 神社やお寺のサクラやカエデ、ブナやイチョウが紅葉すると、この時期だけは数多い古刹も主役が逆転してしまいます。

 今回訪れた東山界隈の他にも渡月橋で有名な嵯峨嵐山の方には天龍寺、大覚寺、落柿舎、常寂光寺、二尊院、祇王寺など紅葉の名所は数知れません。光明寺、善峯寺、勝持寺、大原野神社も見逃せないスポットです。

 また出町柳の北には、下鴨神社、京都植物園、上賀茂神社があります。少し足を伸ばすと、比叡山や大原三千院……。それから、金閣寺、龍安寺、仁和寺のきぬかけの路も静かな京の秋を楽しめるところです。最近、広告で紹介されている「悟りの窓」と名付けられた丸窓と「迷いの窓」という各窓がある源光庵さんや、青もみじや紅葉の色が数寄屋造りの書院のテーブルや床に映り込む瑠璃光院さんも脚光を浴びています。

 

ⅱ 清水寺とねねの道

 11月15日、日の出時刻は6時31分でした。

「お客さん、比叡山が見頃ですよ」。運転手さんのアドバイスに一瞬、気持ちがぐらっとしながら、はやる気持ちを抑え、初紅葉にと決めていた音羽山の清水寺へ。その後は、ねねの道、円山公園、八坂神社のルートを歩いてみる予定です。

 清水寺の境内は、標高242mの音羽山の中腹にあって、清水坂や三年坂を登ってきたところに仁王門や三重塔があります。

 

 仁王門の階段下から見上げると、洗朱色(オレンジ色)の三重塔が紅葉し始めたイロハモミジの隙間から顔を覗かせていました。

 

 空に透けて見えるモミジは赤みがかったところと橙色や黄色、まだ青もみじを残している葉もあります。

  モミジの葉の形がくっきりと空に映っています。イロハモミジはオオモミジやヤマモミジに比べると、切れ込みが深く裂片(れっぺん)と言って手の指のところが細いそうです。

 境内には幾種類もモミジがあります。このモミジは……えーっと……? 頼りにならない、にわか学者は一度は立ち止まって図鑑とにらめっこ。笑

 

 東山界隈のお寺は、9時ぐらいに開門するところが多いせいか、本堂にある清水の舞台に人影はまばらでした。大きくせり出している舞台の欄干に近づくと、視界に入ってきたのは紅葉し始めた音羽山です。

 落葉樹は落葉の前に葉の色を赤や黄色に変えますが、赤色色素のアントシアンが生成されて赤色に変わるから「紅葉」、黄色色素のカロチノイドが生成されて黄色に変わる「黄葉(おうよう)」と言ったりもするそうです。

 イチョウは黄葉しますが、モミジは観賞できるタイミングによっては、黄葉から紅葉する変化を楽しむことができますね。

明日、この音羽山の紅葉を訪れる方は今日と違う紅葉シーンに出会えると思います。

 

 音羽の滝のずっとむこうに子安塔(こやすのとう)が見えました。

 かつて子安塔は、仁王門のそばにあって安産の祈願所になっていたそうです。

 三年坂の別名が「産寧坂(さんねいざか)」と呼ばれるのは、かつて仁王門のそばに在った子安塔の参道として「安産の神様」へつながる参道として栄えたからだとお店の人が教えてくれました。

 安産祈願の子安塔が清水の舞台の真正面に移ったら、お願いを聞いてもらたい人はもっとたくさん増えたのかもしれません。舞台の片隅に、家内安全、商売繁盛、合格祈願、恋愛成就……… 安産祈願ばかりでなく、たくさんの絵馬が所狭しと掛けられています

顔マーク舞台は「地獄組み」?

「清水の舞台」は、樹齢400年のケヤキの大木を使い釘を一本も使わず建てられているそうです。一度組んだら決して外れないことから、「地獄組み」と呼ばれているとか。

 清水寺のはじまりは778年とされていますが、古くから雅楽、能、狂言や歌舞伎が演じられてきた舞台が再建されたのは、1633年の三代将軍徳川家光の時でした。

 以来、この舞台にはいろいろな逸話が残され、それが清水寺の七不思議の1つになっているとのことです。

 奥の院から、モミジに包まれた清水の舞台が顔を覗かせていました。

 

 

 

 

 

 

 

 清水寺を後にして清水坂の途中を右に折れると、三年坂は、まだ朝早いせいか、お店はちらほらと暖簾を掛けたばかり。二年坂も過ぎると、ねねの道になりました。

 お寺の境内につながる緩やかな階段に黄色のモミジと赤く染まったイロハモミジのトンネルが出来ていました。

 ねねの道は、知恵の道、神幸道と並んで東山参道(三つの道)と言われています。

 かつて栄華を極めた豊臣秀吉の没後、秀吉の正室、北政所がその菩提を弔うために建立した高台寺が有名です。

 円山公園や知恩院、八坂神社にもつながるねねの道は、優雅な武家風の屋敷や石堀小路もあって、昼間だとえびす屋さんの人力車が何台も止まっています。

 

 円山公園へ続く大谷本廟そばに黄金色に輝くモミジが一本だけ立っていました。

   楚々として回りを明るく照らすこの木は決して有名な観光スポットではないかもしれません。

  京都の街を歩くとガイドブックに載っていない風景に出会うことがあります。あまり人通りのない場所にこのモミジを見つけた時、自分だけ独り占めしたような感覚で思わずシャッターを押していました。

 

ⅲ 円山公園と八坂さん 

 円山公園に着く頃には空が明るくなっていました。陽が射しかかった公園は青々とした常緑樹と紅葉した落葉樹のコントラストが鮮やかです。木の下から天空に見上げると、モミジがピンクと黄緑色の万華鏡みたいにキラキラしていました。

 円山公園は、祇園枝垂桜だけでなく、ソメイヨシノやヤマザクラ、シダレザクラの木々が植えられています。

 

 桜の紅葉は、モミジやイチョウよりも少し早く、訪れた日は一足先に紅葉した桜の葉も散っていました。

 紅葉して落ちたばかりの桜の絨毯と今が紅葉の盛りのモミジを一枚の写真に収めました。

 桜の葉には、たった一枚の葉にこんなたくさんの色がついています。本当にクレパスの色味表みたいですね。

 

 

 

 

園内にある長楽館という建物のそばにある池にイロハモミジが映り込んでいます。

 ところで、この長楽館という建物、明治中頃に煙草王と呼ばれた村井吉兵衛さんという方の迎賓館だったとのことです。

 長楽館というその名前も明治の総理大臣伊藤博文が名付けたみたいで歴史好きには見逃せないスポットかもしれません

 外観はルネッサンス風で室内はロココ、ネオ・クラシック、アールヌーボーの建築様式で造られています。一見入りにくそうな門構えですが、中に入るとスタッフの方が丁寧に対応して頂けます。

散策の疲れを癒すティーブレークやランチに寄られてはいかがでしょうか。

 東山散策のゴールは八坂神社です。陽が射したモミジの向こうに見える拝殿は大晦日のおけら参りや初詣までつかの間の休息をとっていました。

顔マーク

鍵善良房さんの葛きり

 八坂神社の西楼門を出ると、四条通の両脇に祇園の花街があります。葛きりで有名な鍵善良房(かぎぜんよしふさ)さんも八坂さんのすぐそば。

 螺鈿(らでん)製の容器から黒蜜をからめた葛きりを口もとに運んだら、山歩きの疲れもスーッと消えていました。笑

           

 https://www.kagizen.co.jp/ 

 

 

 

 

 

前の記事

お豆腐
自然

次の記事

紅葉 -その2-