桜前線迫る!
ⅰ 2023桜の満開は早い!
3月17日、京都の桜が開花しました。
昨年(3月24日)より7日早く、平年よりも9日早い開花宣言です。
このままいくと、満開は3月25日前後になります。ウェザーニュースの桜MAPも、どんどん塗り替えられていきますね。 (https://smtgvs.cdn.weathernews.jp/s/topics/img/)
ところで、この桜の開花と満開のタイミングは、前年の秋からの気温の推移に影響するということを聞かれたことはありますか?
桜の花の元となる花芽は前年の夏につくられ、桜は「休眠」と「生長」を経て開花します。
前年の夏に花芽が出来てもすぐに生長しないで、休眠という時期に入り、冬を前に自ら葉を落とし、寒い冬を乗り越えていくそうです。
そして、秋から冬にかけ低い気温にさらされると、桜は、春が近づいたことを知って覚醒します。
休眠が終わり、春先の気温が上昇したら、いよいよ開花へと生長していきます。
2023年、どうやら、桜はずいぶん早起きして待っていてくれそうです。
今回、いつもより早い桜を心待ちにされている方のために、これまで訪れた桜(2012-2022)の写真を掲載しました。
2回に分けて投稿する桜の1回目は「桜前線迫る!」。主に東山界隈の桜を載せました。
そして、2回目は「ぜひ見て欲しい桜2023・2024」。過去、10年ぐらいに訪れた桜の名所の写真を掲載します。
ⅱ 東山の桜散歩コース(桜の写真は、2012-2022に撮影しました。)
鴨川の桜
写真は、2022年に撮影した鴨川沿いのソメイヨシノです。
市内を流れる鴨川は、桜が満開になると、薄いピンクの帯が、ずーっと南北につながって、花見はここだけでもいいぐらいです。笑
ソメイヨシノの寿命は、一説には60年ぐらいと言われています。大きく育った枝が水面にかぶさる姿は、とても勢いがあって、今がこの桜の ″ 青春 ″ かなと思いました。
写真のように遊歩道があるので、五条大橋辺りから下に降りたら、川沿いを三条大橋辺りまでの桜散歩もお勧めです。
先斗町歌舞練場(ぽんとちょうかぶれんじょう)のベニシダレ
鴨川の四条大橋の近くに「都をどり」で有名な先斗町歌舞練場があります。
川端通から眺めると、八重のベニシダレのピンクが、背景の歌舞練場の山吹色の建物と重なって絵になっていました。
あの先斗町歌舞練場の建物の向こう側には、写真の高瀬川が流れています。
街中の桜なので開花も早く、ちょうど同じ頃に見られます。
東山桜散歩から少し外れてしまいますが、お昼ご飯を食べるのに河原町に寄ったら、是非、高瀬川の桜もご覧になられて下さい。
早朝の清水寺
さあ、ここから、東山桜散歩コースのはじまりです。
1番目に、清水寺を選びました。
桜は、一度に咲いて、一度に散ってしまいます。待ってくれない桜をたくさん見るために、″ 長年の失敗 ″ から編み出したコースです。
京都の桜の多くは、お寺や神社で見られますが、開門時間が9時ぐらい。その前に、どれだけ多くの桜を見られるか………実は、花見は、早起きと体力が勝負です。(笑)
清水寺の開門は、朝6時なので、眠さが残る早朝の参道はちょっとこたえますが、後にたくさん、ご褒美があると思って………。(それから、とてもたくさんの観光客が集まる京都ですが、午前中は、意外と人が少ないので。)
まだ、目が覚めない体に坂道の参道は堪えるという方は、タクシーがお勧めです。早朝の参道は、昼間のような混雑がないので、タクシーも8時ぐらいまで、お寺のそばまで上がってくれます。
清水の夜間ライトアップ。1830-2130の時間だったと思います。
ところで、夜間のライトアップを楽しまれる方は、夕方一度閉門してからの入場になります。夜桜見物は、けっこう体が冷えるので、茶店で一休憩されてからが良いかと。
清水の舞台からの桜や、少し離れたところに見える子宝の塔も幻想的ですよ。
舞台では三脚の使用が出来ないので、夜間の撮影は舞台やライトアップされた桜を少し離れたところから三脚を使って撮影するのがいいかもしれません。
陽が射し始めた、ベニシダレ(三年坂)
早朝の清水寺を出た後、三年坂の階段をおりるところに、ベニシダレがあります。
ここは人気の撮影スポットで、外国の観光客の方も多く、昼間は、とても写真を撮るどころではありません。
でも、朝だと人影もまばらでベニシダレと町家の風景を楽しむことができます。
このベニシダレ、樹齢何年なのでしょうか。三年坂の生き証人ですね。
高台寺の桜
高台寺の開門時間は9時ぐらいなので、6時の開門に清水寺を訪れてここまでたどり着くと、少し早いと思います。
その場合は、すぐ近くにある円山公園に先に行かれたらどうでしょうか。
ところで、この高台寺は、豊臣秀吉の正室、北政所が夫の菩提を弔うために創建されました。豊臣家の桜好きもあるのか、お寺には、いろいろな種類の桜が見られます。
夜の特別拝観も行われていて、今年は、3月17日(金)〜5月7日(日)の期間、 17時から夜桜が見られるとのことです。
ちょっと脱線しますが、″ 豊臣つながり″ で、東西線の醍醐駅から10分ちょっと歩いたところに、醍醐寺というお寺もお勧めです。
かつて栄華を極めた豊臣秀吉が、1300人の女房女中を召し従えた「醍醐の花見」で有名なところです。
何十種類もの桜が咲き乱れ、京都市内では一番先に満開になるので、東山桜散歩とタイミングがぴったりです。
円山公園の枝垂桜
桜守の佐野藤右衛門さんが丹精をこめて育てた枝垂桜は、正式名称を「一重白彼岸枝垂桜(ひとえしろひがんしだれざくら)」と呼ぶそうです。
この桜の物語は、「藤右衛門さんと夏の桜」(2022年10月21日投稿)の中で書きましたので、ぜひ読んで頂けたらと思います。
円山公園の園内には、800本のソメイヨシノとヤマザクラも見られます。
そばにある「長楽館」でお茶や食事をぜひ。
知恩院三門のソメイヨシノ
三門をくぐり、急な石段の男坂を昇り詰めると、本堂の御影堂や阿弥陀堂の桜も見事です。
ソメイヨシノが綺麗な知恩院ですが、全国的にも一番多いこの桜は、オオシマザクラとエドヒガンのかけ合わせだと言われています。
桜の原生種は、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、マメザクラ、カスミザクラ、カンヒザクラ、エドヒガン、オオシマザクラ、タカネザクラ、ミヤマザクラ、チョウジザクラなどの10種類です。
全国には、この原生種から、自然的な交配や人為的交配によって作られた桜が、250種類から300種類ぐらいあります。
ところで、知恩院の急な男坂はけっこう大変なので、桜散歩はまだまだ続きますから、三門の右側の、ゆるやかな階段と坂道の「女人坂」を歩いて体力温存して下さい。(京都は、階段が多いので、後で足腰にきますから。笑)
祇園辰巳大明神(ぎおんたつみだいみょうじん)の界隈
知恩院や円山公園から、少し鴨川の方角へ戻ると、八坂神社の西楼門の先に、祇園の花街があります。
そこには、″花見小路″と名前がついているほど、桜が所々に見られます。
すぐ近くにある辰巳大明神には、桜が満開の頃、新郎新婦の撮影隊が順番待ちをしています。
花街のお店の名前が書かれた垣根の朱色が鮮やかで、ちょうどソメイヨシノの枝が四方に広がって、絶好の写真スポットです。
夜もお勧めで、通り沿いに立ち並ぶ料理屋さんからもれる灯りが桜を照らし、とても幻想的な雰囲気の場所です。
人気のスポットですが、満開の季節も、ゆっくりと花見を楽しむことができます。
祇園白川のシダレザクラ
ソメイヨシノは桜が散ると葉っぱが出てきます。
でも、ずっと昔から日本にあったヤマザクラは、花と葉っぱが同じタイミングで見られます。
祇園白川に咲く写真のシダレザクラも、少しだけ黄緑色の葉を見せていますが、ピンクの八重の花びらがとても綺麗でした。
桜の季節は、青空が続かないこともありますが、この日は晴天で水面に枝垂れる桜が風で揺れていました。
ぎをん小森さんで甘いものをご馳走になって一休憩を。
「甘味どころ ぎをん小森」(東山区新橋通大和大路東入元吉町61 075-561-0504)
花見小路そばの桜
桜の名所にはなっていないのですが、背景のクラッシックな建物と一緒に撮りました。
この日は曇り空で、そんな日は、どうしたら鮮やかな花の色を写真におさめられるのか、四苦八苦です。笑
誰も気がつかない、自分だけの 桜を探すのも桜散歩の楽しみの一つだと思いました。
蹴上のインクライン
円山公園や知恩院から少し北東の方角に歩くと、南禅寺があります。ここも桜の名所ですが、写真にはそばにあるインクラインを載せました。
インクラインの歴史は、「南禅寺水路閣」(2022年10月27日投稿)のところで書きましたので、ぜひ読んで頂けたらと思います。
明治の頃、琵琶湖から水を引っ張って水路を造った時、途中、高さなどの関係でどうしても、舟を上げなければいけないところがありました。
写真のレールが、その時に大活躍して、台車に舟を載せ荷物が運ばれたそうです。
1948年まで使われたインクラインは、今、桜の名所に変わりました。
レールには不思議な力があって、人の思いを未来にも過去にもつなげてくれます。桜の季節は卒業と旅立ち、インクラインの桜には、そんな思いがあるのかなと思います。
岡崎疎水と十石船
2023年は、岡崎疏水十石舟めぐりが行われます。
3月18日(土曜日)~4月13日(木曜日)9:30発~16:30発で舟は15分毎に出航します。
十石舟は、南禅寺舟溜り乗船場から夷川ダムまでの片道約1.5キロ、往復約3キロを約25分で運航します。
(京都府旅行業協同組合 https://new.kyo-ryo.com/jkkfn/)
疎水の桜はソメイヨシノが多いのですが、満開になると、川面につくように枝垂れます。
のどかな春の船旅をぜひ楽しまれて下さい。平安神宮へとつながる朱色の橋の下を通る時、乗っている方も見ている方も、みなさん笑顔でした。
平安神宮
平安神宮は、平安遷都1100年を記念して1895年(明治28年)に開催された内国勧業博覧会の目玉として創建されました。
宮内には、ヤエベニシダレ、ソメイヨシノ、ヤマザクラなど300本が見られます。
ヤエベニシダレの満開は、ソメイヨシノが散り始める頃です。このヤエベニシダレは、谷崎潤一郎の小説「細雪」のマキオカ姉妹のお花見コースでした。
哲学の道
京都市左京区にある哲学の道の桜は、市内でも一番最初に満開になる醍醐寺の桜より、一週間ぐらい遅く満開になります。
10年ほど前は、この違いに気がつかず、ずいぶん失敗しました。(笑)
京都駅周辺の桜が満開だったので、朝6時頃ホテルを出発し哲学の道に着くと、桜はどう見ても三分咲き。
シャッターに収めた映像には、枝と蕾ばかりが目立つソメイヨシノと、妙に満開を主張する雪柳の白でした。(笑)
写真のように満開の頃でも、早朝は、地元の方が朝の散歩をされているぐらいです。地元の方に混じって、風情のある哲学の道の桜散歩をぜひ楽しまれて下さい。
清水寺からの出発だと哲学の道は南から北へと歩きますが、時間があったら、銀閣寺の方から下がってきても面白いかなと思います。
将軍塚の満開の桜と市内を望む舞台
四条通の東の突き当りに八坂神社があるのですが、将軍塚はその八坂さんのさらに東、山の上に位置しています。健脚の方でないと歩いて登るのは少し大変かもしれません。(蹴上辺りからタクシーを利用すると安くて便利。)
将軍塚は、桓武天皇が794年に都を京都に定めるおり、和気清麻呂と一緒にこの地に立ち、一望した京都盆地を見下ろし遷都に着手した場所とされています。
写真の満開の桜に少し隠れていますが、大きな舞台から、市内を一望することができます。
青龍殿のベニシダレ
大護摩堂「青龍殿」は、2014年(平成26年)に建てられました。
青不動の前に立つと、その迫力に思わず息を殺して佇んでしまいます。
辿り着くのにひと工夫が必要な将軍塚ですが、日中でも人影はまばらでゆっくり桜と市内の眺めを楽しむことができます。
帰り道は、タクシーなどを利用しない場合、山道を降りて知恩院さんの境内の奥にある鐘堂までたどり着くコースがスリル満点。一度試してみて下さい。
ⅲ 編集後記
元離宮二条城の桜(次回作)
あまり訪れることのないお寺の庭に、桜を見かけ、ふっと足を踏み入れると、また新しい桜に出会うことがあります。
ソメイヨシノのようでどうも違う………オオシマザクラの白よりもヤマザクラのピンクが強いような………そんな想像を働かせるのも、桜散歩の楽しみなところです。
平野神社の桜(次回作)
桜守の佐野藤右衛門さんの本の中に、こんな言葉がありました。
「桜は、かならず下をむいて咲きます。ほかの花は太陽にむかって咲くのに、桜は下をむく。それだけ人をつつみこんでいるのやと思います。それいがいは、同じ親の種からそだてても、花のつきかた、色、にてるようにみえても、どこかちがうもんです。人間とおなじなんです。おなじ親からうまれても、きょうだいではどこかちがう。桜のそだつところ、環境がかわれば、とうぜんかわってきますわ。みんなおなじやったら、おもしろくないですやろ。それぞれ個性があるから、このしごとも、おもしろいんですわ。」(『桜守のはなし』講談社)
次回は、桜が満開の頃、「ぜひ見て欲しい桜 2023-2024」をお届けします。