ぜひ見て欲しい桜 2023-2024
ⅰ ぜひ見て欲しい桜 2023-2024
このブログを投稿する3月24日、京都の桜は満開の季節を迎えました。
平野神社のソメイヨシノ
桜の名所を一度に巡ることはなかなか難しいので、今回は、「ぜひ見て欲しい桜2023-2024」と題しブログを投稿しました。
掲載した写真は、すべて2012-2022に撮影した桜です。
京都地方気象台は17日、京都市で桜の開花を観測したと発表しました。
昨年(3月24日)より7日早く、平年(3月26日)より9日早い開花宣言です。
東京は3月14日に、九段の靖国神社の標準木から開花宣言でした。
ところで、この標準木は、沖縄などのカンヒザクラを除いて、ソメイヨシノの木を見て決めることになっています。
ソメイヨシノは漢字をあてると、「染井吉野」と書きます。
京都御苑のヤエベニシダレ
江戸時代の末、東京・駒込あたりに、染井という村がありました。そこに伊藤さんという植木職人さんがいて、桜の原生種のオオシマザクラとエドヒガンを改良してソメイヨシノが生まれたと言われています。
ソメイヨシノは成長が早い桜なので、明治になると、国の街づくりの中で街路樹としてもどんどん植栽されていきます。
はじめは、「吉野桜」と呼ばれていましたが、実は、奈良に有名な吉野山という桜の名所があって、それと混同しないようにと、染井村で生まれた吉野桜ということで、「染井吉野」と呼ばれるようになりました。
ソメイヨシノが幕末に生まれた桜だとしたら、万葉集や古今和歌集で詠まれた桜の歌は、ソメイヨシノではなく、ヤマザクラやオオヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンだったんですね。
これからご紹介する桜は、ソメイヨシノの他に、ヤマザクラやオオシマザクラ、それから、全国に300種類以上あると言われる、桜の園芸品種もあります。ぜひ一度出かけて、ご覧になられてください。
上賀茂神社の桜
樹齢150年と言われる斎王桜(さいおうざくら)は高さが10m、幹のまわりは一番太いところで、3mにも及びます。
この桜は、平安時代に賀茂社(上賀茂神社・下鴨神社)に仕え、葵祭(あおいまつり)に奉仕した斎王に由来しています。
上賀茂神社には、御所桜、みあれ桜、風流桜、賀茂桜など、歴史に名前が残されている一本桜が多いところです。
ところで、写真のお二人、斎王桜にどんな話をしているのでしょうか?
龍安寺石庭の桜
1975年にはイギリス女王のエリザベス2世が拝観された龍安寺の石庭は、日本でも一番有名な庭の1つです。
全部で15個の石が、どの角度から見ても必ず14個しかみえないように配置されているという不思議な造りの庭園です。
白い砂に大小15の石が配置された枯山水の方丈庭園(「ロックガーデン」)は、エリザベス女王のおかげか、外国人の観光客がとても多いところです。
満開のベニシダレが石庭に降りかかり、静寂の庭園が一際華やかになりました。
鏡容池の周りには、ソメイヨシノやベニシダレ400本が咲き誇り、石庭の桜を鑑賞した後、ゆっくりと桜散歩を楽しむことができます。
勧修寺(かじゅうじ)の桜
2018年春、「そうだ京都、行こう。」のポスターが記憶に新しい桜の名所です。
勧修寺は、後醍醐天皇が生母胤子(いんし)の菩提を弔うために建てたお寺です。
醍醐寺からも近いのですが、桜の季節、とても花見客が多い醍醐寺と比較すると、来訪者も少なく、桜を楽しみながらゆっくりとした時間を過ごすことができます。
観音堂のそばにある氷室池(ひむろいけ)に枝垂れた桜のピンク色が映るので、ロマンチックな一枚を撮ることができるといいですね。
平野神社の桜
江戸時代には、「平野の桜」として京都で一番有名な桜の名所でした。
早咲きの桜から遅咲きの桜まで、60種400本の桜が植えられています。
「魁桜(さきがけ)」、「手弱女(たおやめ)」、「平野妹背(ひらのいもせ)」、「寝覚(ねざめ)」など神社固有の桜を見ることができます。
ライトアップは3月24日から4月16日まで行われていますが、今年の開花状況によっては、4月第一週までが見頃だと思います。
六角堂の桜
正式名称は紫雲山頂法寺といいます。
市内の中心、烏丸通を歩くと、三条通の一つ南、六角通にあるお寺です。
桜の季節、オフィスのサラリーマンも、見事なシダレザクラにどんどん吸い寄せられていってました。
本堂の形が六角形であることから、古くより「六角堂」の通称で知られ、華道家元池坊が住職を務め、いけばな発祥の地としても有名です。
雨宝院の桜
観音堂の前に見られる「観音桜」が朝陽を浴びて淡いピンク色の輝きを見せていました。
この桜は、御室仁和寺の御室桜と同じ「有明(ありあけ)」という品種だそうです。
ここでは、御衣黄(ぎょいこう)という花弁が10から15ある、珍しい緑色の花を咲かせる遅咲きの桜も見られます。
江戸時代には、いろいろな色の桜を求めて栽培品種を育てることが盛んに行われました。
緑色の桜には、御衣黄の他にも、「鬱金(うこん)」と呼ばれる桜もあります。
地蔵院の桜と五色椿
地蔵院は別名「椿寺」と言います。このお寺を始めて訪れたのは、10年ほど前。ちょうど市内ソメイヨシノが満開を過ぎ、MKタクシーの運転手さんにお願いして連れて行って頂いたお寺です。
満開の八重ベニシダレの手前に、色とりどりの花が咲いた椿がありました。
実はこの椿は一本の木です。「五色八重散椿(ごしきやえちりつばき)」といいます。
樹齢120年ほどの椿は、ちょうど桜の満開と重なります。一度だけ、椿の花が散ったところに遭遇したことがあります。赤やピンク、白、黄色の花びらが地面に落ちている風情も格別でした。
佐野藤右衛門さん自邸の桜
佐野藤右衛門さんは、1928年、京都市に生まれた植藤造園の当主です。
現在の16代目藤右衛門さんは、桜の季節になると、テレビでもよく見かけ、あの柔和な笑顔についつい、そのお話に聞き入ってしまいます。
今はご自宅を開放されておられないようですが、以前、早朝にご自宅にお邪魔して撮影したシダレザクラを載せました。
円山公園の祇園枝垂れの他にも、「ケンロクエンキクザクラ」、「イチハラトラノオ」、「オオサワザクラ」など藤右衛門さんが手入れをされた桜は全国で見られます。
藤右衛門さん、またぜひ近いうちに、ご自宅の桜を見せて下さい。
元離宮二条城の桜
大政奉還表明の舞台として名高い二条城は、徳川家康が造営し、家光により現在の規模に完成しました。
城内には、カンヒザクラ、一重と八重のシダレザクラ、ソメイヨシノ、ヤマザクラなど、50品種300本の桜があります。
少しずつ開花の時期が異なるので、いつもより開花の早かった今年も4月中旬ぐらいまで桜を楽しむことができます。
今年も「二条城桜祭り」が、3月17日(金)から4月15日(土)まで開催されます。
夜間(18時から21時)に行われる歴史的空間を活かしたプロジェクションマッピングや桜のライトアップも人気があるそうです。
醍醐寺の桜
「花の醍醐」といわれ、豊臣秀吉が最晩年の1598年4月20日(慶長3年3月15日)に、このお寺の三宝院裏で催した花見の宴で有名なところです。
お彼岸の頃咲き始める河津桜から、一重と八重のシダレザクラ、ソメイヨシノ、ヤマザクラなど、およそ1000本の桜が京都の桜シーズンのほぼ初めから終わりまで咲き続けています。
エドヒガンという枝垂れる桜の原生種があるのですが、ここ醍醐寺の方は、「江戸桜(えどざくら)」と呼ばれていました。
桜の季節、毎年4月の第2日曜日に、豊太閤花見行列が行われます。
秀吉が息子・秀頼や正室・北政所(きたのまんどころ)、側室の淀、三の丸など女房衆1300人余りが参加した「醍醐の花見」が再現されるんですね。
いつもより早く満開になった桜が、何とかこの日までもっていてくれたらと思います。
京都御苑(京都御所)の桜
市内の真中にある京都御苑は、御所を囲む外周4kmの大きな公園です。
苑内は桜だけでなく、白梅、紅梅、蝋梅に、桃やモミジなど、四季を通じて花を咲かせ紅葉する木々が5万本ほどあるといわれます。
桜は、「出水の桜(でみずのさくら)」や、近衛邸址のシダレザクラが一番早く咲きます。
そして近衛邸址のヤエベニシダレやヤマザクラ、学習院跡のヤマザクラと、苑内は次々に桜が咲いていきます。
サトザクラの品種「関山(かんざん)」、「御衣黄(ぎょいこう)」、「普賢象(ふげんぞう)」、「松月(しょうげつ)」、「妹背(いもせ)」など、とても珍しい桜が見られるのも御苑の楽しみなところです。
原谷苑の桜
明治に山林業を始められた村岩家が作り出した花の桃源郷です。
景色のいい丘に数百本の桜や雪柳、つつじなど本当にたくさんの花が咲き乱れています。
市内のソメイヨシノの開花よりも少し遅く、写真のベニシダレは満開になります。
ベニシダレが満開になると、通り抜けるのもままならないほどに密集し、この桜のシャワーを楽しみに、今は全国的にも有名な桜の名所になりました。
原谷苑へのアクセスは平たんな道が少なく、少し辿り着くのが大変です。タクシーを時間で借りるのが良いと思います。
青空の日、桜は絵になりますね。(原谷苑の桜)
ⅱ 編集後記
もうすぐ入学式。
入学式と言えば、桜。そして、イメージする花は、ソメイヨシノです。
オオシマザクラとエドヒガンが交配して生まれたこの桜は、成長が早く、若木のうちから花がたくさんつくし、接ぎ木もしやすいため、あっという間に全国に広まりました。
藤右衛門さんは、そんなソメイヨシノのことを「人間の都合であちこちに植えただけ……九州の桜も、東北の桜も、染井吉野はおんなじ顔をしている」といいます。
仁和寺の御室桜(おむろざくら)。一番最後に咲くこの桜を愛で、京都の人は『「春の義理」を果たした』と言います。
京都には、ソメイヨシノ以外の桜もたくさん見られます。
平野神社や京都御苑のように、桜の品種の宝庫になっているところもありますし、一重や八重のベニシダレが庭園いっぱいに咲いている原谷苑のような桃源郷もありました。
そして、たった一本しか咲いていないのですが、ふとした時に思い出す桜もあります。
ゆっくりと桜散歩をしたら、そんな桜の中に、万葉集や古今和歌集の歌人が詠った桜に出会うかもしれません。
あっという間に散り始めた高瀬川の桜
ところで、ソメイヨシノに、ちょっと手厳しかった藤右衛門さんだと思ったのですが、間違っていました。(笑)
種がないソメイヨシノは、花に蜜がなく、蜜を欲しがる虫や実を食べる鳥も寄ってきません。
桜と一緒に暮らしているはずの虫や鳥の共同生活が減ると、生態系が変わってくるそうです。
桜は枝枯れをしながら成長するらしいのですが、接ぎ木や挿し木で大きくなったソメイヨシノには「幹」がなく、太い木に見えてもみんな「枝」なので手入れをしないと桜がもたないんですね。
そんなソメイヨシノのことを、藤右衛門さんは、
「人の都合で植えたのなら、人が最後まで面倒見てやらんといかん」………そう、言っておられました。
やっぱり、ソメイヨシノのことも見守ってくれています。………。(笑) uetoh.co.jp/about/sanotouemon/