京都水族館
ⅰ 水族館のお話
子供の頃、遠足や家族旅行で出かけた水族館。皆さんには、どんな思い出がありますか?
今回、「京都水族館」をテーマにブログを書こうと思い立ち、水族館のことを少しだけ調べて見ました。
全国には130も水族館があるんですね。入場者数が多い人気のある水族館というと、3位は名古屋港水族館(愛知県)、2位は海遊館(大阪府)、そして1位が沖縄の美ら海(ちゅらうみ)水族館です。
″ 美ら海 ″ で思い出すのは、少し前にフジテレビで放送された『美ら海(ちゅらうみ)からの年賀状』(2007年)です。
水族館の館長浦崎信夫(時任三郎)は、老朽化した水族館の建て直しに、巨大なジンベイザメやマンタが雄大に泳ぎ回る巨大水槽に夢を賭けます。北海道の病室でそのニュースを見ていた和也(須賀健太)は実現不可能な浦崎の計画に呆れ、やがて二人に年賀状という形の交流が始まります。
ドラマのとおりに、実際の美ら海水族館も、ジンベイザメやマンタが回遊する「黒潮の海」と呼ばれる水槽によって復活を遂げました。
このドラマが放送された頃、これまで ″ 古い ″ イメージのあった水族館は、独自の趣向を凝らした水族館に変身していきます。
マグロやカツオが回遊する葛西臨海水族園、イルカショーの演出が凝っているエプソン品川アクアスタジアム、横浜・八景島シーパラダイス、海と水族館が一体となっている新江ノ島水族館など……………。
それでは、「京都水族館」はどんな ″ 水族館 ″ なのでしょうか。
ⅱ 10のゾーンに分かれた展示
「京都水族館」がオープンしたのは2012年。
そんなに昔ではないんですね。
もともとJR貨物の梅小路駅があった場所に平安遷都1200年の記念事業として「梅小路公園」が開園しました。「京都水族館」は、その公園の一角にあります。
″ 京都 ″ の地形は縦に長く、実は海に接しているところは日本海の天橋立や舞鶴のところだけです。鴨川や桂川の水や隣の滋賀県の琵琶湖から豊かな水は運ばれてくるのですが、ここに水族館を運営できる豊富な海水はありません。
そこで ″ 京都 ″ は「内陸型大規模水族館」を全国で初めて考えました。
″ 内陸型 ″ というのは、海の海水を直接取り入れない水族館のことです。施設内の大きな装置で人工海水を作り出し、それを魚類系と海獣系で塩分濃度を変えながら循環させる仕組みになっています。
早速、水族館の施設をご紹介します。
水族館は、次のパンフレットのように大きく10のゾーンに分かれています。
ゲートを入った1Fには、➀京の川、②オットセイ(屋外)、③アザラシ(屋外)、④京の海、 2Fに上がると、⑤ペンギン(屋外)、⑥クラゲワンダー、⑦交流プラザ、⑧イルカスタジアム(屋外)、⑨山紫水明(レストラン)、⑩京の里山(屋外)になっています。
小さくて見えづらいと思いますが、実際に出かけられる時は、水族館の公式サイトを利用して下さい。( https://www.kyoto-aquarium.com )
「京都水族館」の特長はこんなところにあります。
『京の川』 一階のゲートを入ると、はじめに遭遇するのが「京の川」。鴨川や桂川の豊富な水系にこんなに魚が生息していたことに驚かされます。
やまめ、かねひろ、むぎつく、にほんうなぎ、にっこういわな、おやにらみ、こい、なまず………館内を散策すると魚たちがとても身近に感じられるようになっています。
「京の川」のもう一つ特徴は、写真のオオサンショウウオ。
オオサンショウウオは、綺麗な河川に住む世界最大級の両生類で、カエルやイモリの仲間です。
水が綺麗な京都の川は、全国でも珍しいオオサンショウウオの生息地域です。
写真のオオサンショウウオは全長150cm、体重が33kgのものもあるとのことでした。
近年、鴨川や上桂川で発見されるオオサンショウウオには、中国から入って来たチュウゴクオオサンショウウオとの交雑種が見られるようになったそうです。
京都水族館では、オオサンショウウオが絶滅しないようにと種の保存に向けた研究を進めています。
『アザラシとオットセイ』 「京の川」のすぐ隣にあるのが、オットセイやアザラシのコーナーです。
大きな水槽を自由に泳ぎ回るオットセイやアザラシを水槽の真横から見ることもできるのですが、階段を登ってすぐそばにいるオットセイやアザラシが見られます。
京都水族館は、飼育スタッフと訪れた人の距離がとても近くなるように設計されているので、直接いろいろなお話を聞くことができます。
オットセイとアザラシの見分け方は、小さな耳を持っているのがオットセイ、耳の代わりに小さな孔が開いているのがアザラシだとか。
それから、前足で体をおこして後ろ足で器用に動くオットセイと前足だけで滑って進むアザラシの違いもわかりました。
『京の海』 この写真は、「京の海」のサメやエイが泳ぐ様子です。
高さが6mを越える大きな水槽を下から見上げたり、上から覗いたりできるのも特徴です。
本物の海を想像して、ねこざめやどちざめ、アカエイやホシエイが泳ぐ姿を長椅子に座って眺めると心もずいぶん癒されますね。
『ペンギン』 お馴染みの「ペンギン」や「イルカスタジアム」にも「京都水族館」らしさがありました。
真っ白のお腹に黒い斑点と顎の下あたりに黒いラインがあるケープペンギンですが、人間と同じように性格もいろいろ。
飼育スタッフは、そんなペンギンの性格をわかりやすく伝えてくれます。
写真の「まる」、「おいけ」、「しじょう」、「むろ」……どこかで聞いたことのある名前ですが、子供たちはパパやママと「まる」や「おいけ」を探すのに夢中です。
『イルカスタジアム』 イルカスタジアムでは、2022年9月30日、とってもHappyなことがあったそうですす。
ハンドウイルカの「キア」に赤ちゃんが誕生しました。京都水族館のコラムでは、出産前2か月と1か月にわたって、キアの様子や飼育スタッフの声が紹介されています。
新しく生まれた「ツムギ」と「キア」の親子ワッチが2023年4月9日まで開催されていました。
「ワッチ」とは、生まれたばかりの「ツムギ」に「キア」がいろいろなことを教える様子を見守るプログラムだそうです。
『交流プラザ』と『京の里山』 とても広い水族館にはまだまだご紹介していないコーナーもあります。
屋外にある「京の里山」では、昨年の5月、3年ぶりに田植えを実施したそうです。
自然豊かな里山で田植えをしながら、子供たちは里山の生き物にも直接触れることができるんですね。
ⅲ クラゲワンダー
ミズクラゲ種
ここからは、一番のお気に入り「クラゲワンダー」の世界をご紹介します。
「海水浴はお盆までにしなさい!」子供の頃、そんなことを言われた記憶はありませんか?
お盆になると、アンドンクラゲが海水浴場にも大量に発生しました。
刺されると電気が流れたような痛みがあって楽しかった海水浴のちょっとほろ苦い思い出です。
クラゲは英語でjellyfish(ジェリーフィッシュ)といいます。体全体の95%以上が水分でできているとても柔らかな生き物です。
食感がぷにょぷにょしているクラゲは、お菓子のゼリーの水分比率と同じくらいになるそうです。
ミズクラゲ種
水族館には、一年間にいろいろなクラゲが登場します。今回スケッチしたクラゲをご覧いただきながら、ブログを読んで頂いた後にクラゲファンが一人でも多く増えたらいいなと思っています。(笑)
無重力を感じているかのように水槽の中をゆったりと浮遊する写真のクラゲは、水族館でも一番よく見かけるミズクラゲの一種です。
簡単な「クラゲの絵」を描いてみました。
クラゲの絵
ゼラチン質のふんわりとした「傘(かさ)」の縁に細い「触手(しょくしゅ)」が無数にあります。
ここから出される毒で、食べ物になるプランクトンの動きを止め、長い「口腕(こうわん)」で捕まえにいきます。
四葉のクローバーのような模様は「胃」です。プランクトンを食べると、それまで透きとおっていた胃がプランクトン色に発光してとても綺麗です。
目がないクラゲは、触手の付け根に眼点と呼ばれる光を感じる器官があるそうです。
京都クラゲ研究部
「クラゲワンダー」にも、京都水族館の特長 ″ みんなで一緒に研究する ″ 『京都クラゲ研究部』があります。
あとで出てくる「キャノンボールフィッシュ」の水槽のまわりには、黄色い帽子の保育園の子供たちが集まっていました。
アトランティックベイネットル
クラゲは、地球ではじめて神経をもった原始的な動物で5~6億年前から形を変えていないそうです。
この「アトランティックベイネットル」も幻想的なクラゲで、どこかのポスターなどで見かけたことはありませんか?
その美しさとは裏腹に24本ぐらいあるとされる触手には猛毒があるそうです。
主にメキシコ湾に分布し、肉食でプランクトンや甲殻類などを捕食しています。
アカクラゲ
写真の「アカクラゲ」は、日本近海に多く分布し、傘には放射状の褐色の縞模様が16本、長さ50本ほどの触手が2mぐらいにもなるそうです。
「アカクラゲ」にはとてもユニークな名前がついています。それは、「ハクションクラゲ」とか、「海の玉ねぎ」。
「アカクラゲ」が乾燥すると、毒をもった刺糸が舞い上がり、人の鼻に入るとくしゃみが止まらなくなるそうです。
戦国武将の真田幸村はそれに目をつけ、粉にした「アカクラゲ」を敵に投げつけ戦意を喪失させたという逸話も残っています。
タコクラゲ
夏から秋ぐらいに関東より南の静かな湾内で見られる「タコクラゲ」は、水玉模様の真ん丸とした傘がきのこみたいですね。
触手がなく口腕のところから伸びている棒状のものが8本あって「タコクラゲ」と呼ばれています。
写真のように少しずつ色が違うのですが、これは「タコクラゲ」の体の中に住んでいる藻が光合成をしているからだそうです。藻の成長や種類で「タコクラゲ」の色も黄色や青色に変わります。
オワンクラゲ
飼育スタッフが生命力があって何年も生きる「オワンクラゲ」の話をしてくれました。
普段は閉じている「オワンクラゲ」の口の部分は、エサを食べる時には大きく開くそうです。エサがなくなると仲間の「オワンクラゲ」を食べることもあるとか。
このクラゲが有名になったのは、2008年にノーベル化学賞を受賞した下村脩博士の研究材料としてでした。
「オワンクラゲ」が刺激によって傘のへりが緑色に光ることに着目し、「緑色蛍光タンパク質(GFP)」を発見されたそうです。
何億年も前から生息していたクラゲには、まだまだ人類のヒントがあるのかもしれません。
キャノンボールジェリーフィッシュ
英語名 Cannonball jellyfishは「大砲の弾クラゲ」。水槽の中を丸っこいクラゲが直線的に浮遊している姿はまさに ″ 大砲の弾 ″ みたいですね。
メキシコ湾などに生息する「キャノンボールフィッシュ」は25cmぐらいまで大きくなるそうですが、ここでは生まれた頃の1cmに届かない小さな幼生から見ることができて子供たちの人気のスポットでした。
パシフィックシーネットル
カリフォルニア州やオレゴン州の海岸でよく見られる「パシフィックシーネツトル」ですが、日本近海にも生息しています。大きいものだと傘の直径が1m以上、触手も数mに及ぶそうです。
鮮やかなオレンジ色の傘と白くて長いフリルのような口腕が美しいので水族館では人気者のクラゲです。
つい触りたくなるフリルのような口腕ですが、赤色の長い触手には毒があるとのことでした。
ⅳ 編集後記
ミズクラゲ種
「クラゲワンダー」には、ジュズクラゲ、サカサクラゲ、シロクラゲ、サルシアクラゲ………など他にもいろいろなクラゲの生態が紹介されています。
水族館でクラゲを見つけると一番に目を引き付けられるのは、真っ暗な水槽の中でキラキラと浮遊する姿。
このクラゲの発光もまたまだ謎だらけだとか。
オワンクラゲやカラカサクラゲは光るための細胞を持っていて自分で発光するそうですが、オキクラゲは自分で光るのではなくて光る成分が入った粘液を出します。
クシクラゲは体の表面の「クシ板」の部分に光が反射して光ったりします。
本当は、まだまだ盛りだくさんで伝えきれない「京都水族館」。ぜひ一度出かけて見てください。
この2,3年、世の中で起きた出来事は、水族館も無関係ではありませんでした。5年ぶりに訪れたこの日、お客さんは来ているのかな………思わず心配してしまいました。
開館したばかりの館内は、はじめのうち、しーんとしていたのですが、10分もしないうちに、そんな思いは杞憂に終わります。(笑)
あっという間に、館内は、黄色や緑、赤色にオレンジ色の「ちびっこギャング」たちに占拠されてしまったんです。(笑)
「ちびっこギャング」は、カクレクマノミの水槽の前で一斉に声を上げました。
「ニモ!」「ニモがいる!」「先生、ニモだよ、ニモ!」幾つもあがるギャングの歓声に館内の状況は一変しました。(笑)
少し圧倒されながら、その声に、ディズニー映画『ファインディング・ニモ』のことを思い出しました。
(『ファインディング・ニモ』は、故郷グレート・バリア・リーフの美しいサンゴ礁で暮らしていたニモがお母さんコーラルを亡くした後、お父さんマーリンと別れ冒険に出かける物語です。ニモは、好奇心が旺盛で、冒険の先々でいろいろなアクシデントに遭遇します。)
ふっと、物語の中のニモが赤や黄色の「ちびっこギャング」と重なって見えました。
「京都水族館」は、いろいろなコーナーで子供たちと一緒に ″ 魚の研究 ″ をしています。水族館を訪れることができたら、赤や黄や緑の ″ ニモ ″ を探して下さい。うまく遭遇出来たら、きっと水族館の楽しみも倍増すると思います。